第3章

高橋大輔視点

午前二時、俺は社長室で一人、ウイスキーグラスを片手に座っていた。

一面の窓の向こうにはM市の夜景が広がり、無数の光が星のように瞬いている。だが、俺の世界は闇に閉ざされたままだった。

俺は一体、何をしているんだ?

グラスを一息に呷り、アルコールで自分を麻痺させようとしたが、絵里の目に浮かんだ涙が、どうしても頭から離れない。宴会場の真ん中で彼女が俺に告白した時、心臓が止まるかと思った。

驚いたからじゃない。俺が必死に抑えつけてきた心の奥底の声が、ついに共鳴する相手を見つけてしまったからだ。

「くそっ!」と俺はグラスをデスクに叩きつけた。

自分がどんな化け物か、俺は分かっていた。彼女は法的にはもう大人だ。だが、育てたのは俺だ……そんな彼女に、なぜこんな感情を抱いてしまうのか?

焼けるようなウイスキーが胸を焦がすが、内なる苦悶には到底及ばない。目を閉じると、記憶が否応なく溢れ出してきた。

十歳の絵里、まだ無邪気な小さなお姫様だった頃。

俺が彼女の後見人になったばかりの頃だ。桜井家の豪邸の書斎。午後の陽光がカーテンの隙間から差し込み、絨毯に縞模様を描いていた。俺は彼女の父親が遺した財産の書類を整理しており、その傍らで、彼女は俺の万年筆をいじっていた。

「大輔さん、どうしてこの数字がそんなに大事なの?」銀の鈴を転がすような澄んだ声で、彼女は首を傾げて尋ねた。

「君の未来を決めるものだからだよ、お嬢さん」俺は優しくそう言って、彼女の髪を撫でた。

「こんなの勉強したくない。大輔さんと映画が観たい」彼女は拗ねて、俺の腕に寄りかかってきた。

あの頃、彼女はまだ小さな女の子だった……少なくとも、俺はそう自分に言い聞かせていた。彼女が俺に依存することで、俺は自分がまっとうな後見人であり、父親であるかのように感じられた。彼女はただ父親代わりを必要としているだけなのだと。

そう、思っていた……。

だが、十六歳になると、すべてが変わり始めた。

あの冬の夜のことを覚えている。リビングには大きな電気式の暖炉風インテリアが設置され、LEDの疑似炎が彼女の顔を柔らかくライトアップしていた。俺は高熱を出していた。家政婦も他の使用人たちも帰宅していたが、彼女だけは俺の看病をすると言って聞かなかった。

「熱があるんでしょ。私が看病する。他に誰もいないんだから」彼女は心配そうに言いながら、ぬるま湯の入った洗面器を運んできた。

「絵里、自分の部屋に戻りなさい。こんなことは家政婦に任せればいい」俺は身を起こそうとしたが、ひどく体がだるかった。

「嫌。そばにいたい。病気の時の大輔って、なんだかすごく無防備だから」彼女は頑なに首を振り、濡れたタオルで俺の額を冷やし始めた。

彼女が額の汗を拭おうと身を乗り出した時、ふわりと彼女の香水の匂いがした。彼女はもう、あの小さな女の子ではなかった。その体は、若い女性のものへと成長していた。その手つきはあまりに優しく、その眼差しは、まるで俺が世界の中心であるかのように、ひたむきだった。

その優しさが……ああ、彼女はもう、子供じゃなかった。

彼女の俺への関心が、後見人に対する単なる依存を超えていることに気づき始めた。そして俺も……俺もまた、抱くべきではない感情を育て始めていた。

十七歳、彼女は俺にとって耐えがたい苦痛となった。

彼女は意図的に着飾るようになり、新しく買ったドレスを着ては俺の前でくるりと回ってみせた。

「大輔、このドレス、似合う?」期待に満ちた瞳がキラキラと輝いていた。

「……似合ってる。それより、もう宿題をしたらどうだ」俺は神経質に彼女の視線を避けた。

彼女の顔に失望の色が浮かんだ。「もう、私と一緒にいるのは嫌なの?」

俺は彼女の気持ちを理解し始めていた……そして、俺自身の感情も、もはや単なる保護者としてのものではないことに気づいていた。俺は意図的に彼女を避け、二人きりになる時間を減らそうとした。だが、彼女はいつもどうにかして俺に近づく方法を見つけ出した。

彼女が失望の眼差しを向けるたび、俺の心は引き裂かれるようだった。

俺はなんて異常な変質者なんだ?彼女は俺を信頼しているというのに、俺は……。

はっと目を開け、俺は再びグラスに酒を注いだ。

彼女があの男にキスされるのを見た時……俺は、あの男を引き裂いてやりたい衝動に駆られた!!!

宴会場の真ん中で彼女に告白された時、最初の反応は驚きではなかった――歓喜だった。だが、その直後、深い恐怖と自己嫌悪が襲ってきた。

彼女を完全に諦めさせるために、俺はできる限り冷酷なやり方で彼女を拒絶するしかなかった。たとえそれが彼女を傷つけることになっても、たとえ俺自身の心が血を流していたとしても。

「大輔?」社長室のドアが静かに開き、綾子が入ってきた。

「まだいたのか」俺は機械的に尋ねた。

「心配だったのよ」彼女は俺のそばに来て、優しく肩を撫でた。「あの子はまだ若すぎて、自分の気持ちが分かっていないだけ。あまり深刻に考えないで」

俺は頷き、彼女を膝の上に乗せ、機械的に抱きしめた。だが、頭の中には絵里の姿しかなかった――涙に濡れた瞳、傷ついた表情。

「いっそ、あの子を遠くの大学に編入させた方がいいかもしれないわ」綾子は続けた。「こういう誘惑から離してあげれば。距離を置けば、非現実的な考えも忘れるでしょう」

「そうだな」俺は平静を装って答えた。

もしかしたら、彼女は本当に一時的な感情に流されているだけで、しばらく離れて過ごすことが、お互いのためになるのかもしれない……。

だが、絵里がこの家を出ていくこと、俺を憎むこと、俺の人生から完全に姿を消すことを想像すると、耐え難いほどの痛みが全身を駆け巡った。

腕の中で綾子が何かを囁いていたが、その言葉は一言も耳に入らなかった。俺の世界では、ただ一つの声が繰り返し響いていた。「大輔、愛してる」

俺が最も聞きたかった言葉であり、決して聞くべきではなかった言葉。

俺は目を閉じ、綾子の肩に顔を埋めた。内なる痛みから逃れようとするように。だが、どれだけ逃げようとしても、もう決して元には戻れないことがあるのだと分かっていた。

絵里はもはや、俺の保護を必要とする小さな女の子ではなかった。

そして俺もまた、純粋な後見人ではなかった。

俺たちの間には、乗り越えられない深い溝があり、それでいて断ち切れない繋がりがあった。この痛みを伴う矛盾は、生涯俺を苦しめ続けるだろう。

おそらく、離れることが、本当に最善の選択なのだろう。

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