第5章

高橋大輔視点

一週間が過ぎた。

俺は社長室の椅子に座り、机の上に置かれた書類を眺めていた。胸の痛みは、今も生々しいままだった。絵里の冷たい顔が頭から離れない。最後に俺に向けられたあの眼差し――まるで、全くの他人を見るかのような。

俺はいったい何をやってるんだ?

甲高い電話の着信音が、俺を現実に引き戻した。

「大輔、緊急事態だ!」相棒である井浦健の声には、切迫した響きがあった。「桜井株式会社傘下のテックビジョンが、敵対的買収を仕掛けられている。すでに株式の三十五パーセントを取得されていて、明日の朝には株主総会を開いて、買収を強行するつもりだ」

俺ははっとした。「なんだって...

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