第8章
桜井絵里視点
今日は私の二十一歳の誕生日。人生で最も重要な日だ。
私は桜井株式会社の四十八階、役員会議室の外に立っていた。深く息を吸い込む。ガラス張りのドアの向こうには、繫華街のエリートたちが集まっているのが見えた。その中には、私が最も会いたくない顔――竹内綾子の姿もあった。
「準備はいい、絵里?」隣に立つ祖母の声は、恐ろしいほどに穏やかだった。
「これ以上ないくらいに」私は役員会議室のドアを押し開けた。
十六対の視線が一斉に私に向けられた。高価なスーツに身を包んだ役員たちが、長いテーブルの両脇に座り、その表情は真剣そのものだ。綾子は祖母の席の近くに座り、まるで私の失敗をすで...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章


縮小

拡大