第1章

二年。

小野寺幸男が祝杯のビールグラスを友人たちと打ち合わせるのを、私は見ていた。心の中で、その数字を計算する。二年。週二回のセラピー、EMDRトラウマ療法を続けた二年。彼をPTSDという暗い深淵から連れ出すために、共に歩んだ二年という歳月。

「俺たちのヒーロー、幸男に乾杯!」

中心街にあるクラフトビールバーの騒がしい音楽を突き抜けて、長野健太の声が高らかに響いた。「普通の生活への帰還に!」

周りの友人たちが熱狂的に応え、ビールの泡がテーブルに飛び散る。私もレモンソーダを掲げた――仕事関係の席ではアルコールを飲まない。職業柄の習慣だ。

いや、今夜を境に幸男はもう私の患者ではなくなるのだと、自分に言い聞かせた。

幸男が、私がこれまで数えきれないほど見てきたあの眼差しを向けてきた。感謝と、そして私がいつも深く分析するのをためらってきた何かが混じった眼差しだ。照明の下で彼の茶色い瞳が輝き、もはやあの虚無と恐怖は宿っていなかった。

「本当のヒーローは映奈さんだよ」幸男の声は少し掠れていた。「彼女がいなかったら……」

「そんなこと言わないで」私は彼の言葉を遮った。職業的な微笑みが無意識に浮かぶ。「患者さんが回復していくのを見るのが、私の仕事だから」

健太が、男同士で交わすような、全てお見通しだと言わんばかりの笑みを浮かべた。「幸男、マジな話、二年間も映奈さんはどんな彼女よりお前のこと気にかけてくれたんだぜ。命の恩人と結婚しちまえよ!」

頬が熱くなるのを感じ、私はソーダに集中するふりをした。でも、幸男の視線が数秒間、私の上をさまよっているのを感じていた。

「今は普通に仕事ができるだけで十分だよ」幸男は気まずそうに話題を変えた。「ソフトウェア開発の仕事に復帰して、安定した収入があって……」

「仕事? まったく、幸男がすべきなのはデートだろ!」別の友人、竹下涼真が口を挟んだ。「映奈さんみたいな最高の女性が目の前にいるのに――何をためらってるんだ?」

私は幸男の反応を盗み見ずにはいられなかった。

彼はただ微笑んで、何も答えなかった。

パーティーは続き、会話は仕事やスポーツの話題へと移っていった。私はボックス席の隅に座り、皆と笑い合う幸男を眺めながら、胸の内に奇妙な何かがざわめくのを感じていた。

二年前、初めてこの男性が私のオフィスに姿を現したとき、彼はまるで幽霊のように痩せ細り、目は恐ろしいほど虚ろだった。震災で負った心の傷が、彼を毎晩悪夢でうなされ叫び声とともに目覚めさせ、まともに働くことも、誰かとの関係を保つこともできなくしていた。

それが今ではどうだろう――筋肉は再びつき、笑顔は自然でリラックスしていて、友人たちと普通に交流できている。これはセラピストにとって最高の報酬だ。

でも……。

でも、どうして私はこんなに空っぽな気持ちなんだろう?

ソーダを置き、私は立ち上がった。「ちょっと風に当たってくる」

幸男がすぐに私を見上げた。「付き合おうか?」

「ううん……」私は一瞬ためらい、そして考えを変えた。「……やっぱり、お願い」

桜並木通りの夜風は、思ったよりも涼しかった。十月。濡れた歩道にネオンが色とりどりの光を落としている。私は深く息を吸い込み、頭の中を整理しようと努めた。

「大丈夫?」隣に並んだ幸男が、心配そうに尋ねてきた。「あいつらのからかい、ひどかったかな?」

私は彼の方を振り向いた。街灯の下で、彼の顔の輪郭はくっきりと浮かび上がっていた――スポーツ刈りに、日に焼けた小麦色の肌。私はこの顔を二年間、痛みと歪みから、現在の平穏と静けさに至るまで、ずっと見てきた。

「幸男……」私は勇気を振り絞って口を開いた。

「うん?」

もう一度、深く息を吸う。心臓が胸から飛び出しそうだった。「幸男、私たち……私と付き合ってくれないかな。恋人として」

その言葉が口から出た瞬間、私は後悔した。

幸男は凍りついた。

彼は自分の手を見つめ、それから遠くの通りに目をやり、そしてまた自分の手に視線を戻した。時が止まったかのようだった。

十秒。

二十秒。

三十秒。

忌々しいほどの沈黙。

顔が燃えるように熱かった。この沈黙は、どんな拒絶よりも残酷だった。

「映奈さん……」彼がようやく口を開いた。

「大丈夫、ちょっと……気軽に聞いてみただけだから」私は慌てて彼の言葉を遮り、無理に軽い笑い声を立てた。「戻ろう、みんなが待ってる」

ボックス席へ戻る足取りは、今にも崩れそうなほど頼りなかった。幸男は何も言わずに私の後ろをついてきた。

席に戻り、再びソーダを手に取ると、自分の手が微かに震えていることに気づいた。

「二人で何をそんなに長く話してたんだ?」健太がからかう。「まさか外で……」

「ただの雑談よ」私は彼の言葉を遮った。声が不自然に明るく響く。「幸男、最近の睡眠はどう? もう悪夢は見ない?」

すぐに、自分がセラピストのモードに戻ってしまったことに気づいた。これは私の防衛機制だ――状況が気まずくなったり、辛くなったりすると、無意識に職業的な役割の中に逃げ込んでしまう。

幸男は私の視線を避け、テーブルのビールグラスを見つめていた。「映奈さん……」

彼は一旦言葉を切り、そして顔を上げた。私の目をまっすぐに見つめてくる。その瞬間、私は彼の目に、回復の過程では一度も見たことのない、何か断固としたものを見た。

「あなたは、もう俺の主治医じゃない」

彼の口調は穏やかだったが、一つ一つの言葉が弾丸のように私の胸を撃ち抜いた。

私はこわばったように頷いた。「もちろん、わかってる」

『あなたは、もう俺の主治医じゃない』

その言葉が頭の中で反響し、周りの音をすべてかき消していく。友人たちはまだ笑い、話し、音楽も鳴り続けているのに、私の耳にはその言葉しか聞こえなかった。

『あなたは、もう俺の主治医じゃない』

「職業上の関係を維持すべきだ」でもなく、「考える時間が必要だ」でもない。単純な「いや」ですらなかった。

ただ、「あなたは、もう俺の主治医じゃない」と。

まるでこの二年間、彼の目には私が水野映奈という個人として、二十九歳の女性として、彼のことを心配して不眠になるほどの女として、一度も映っていなかったかのように。私はただの機能、職業的な役割、治療のための道具に過ぎなかったのだ。

ソーダを手に取ると、すでに飲み干してしまっていることに気づいた。グラスの中には溶けかけた氷が残っているだけで、カランと小さな音を立てている。

「そろそろ帰るわ」私は立ち上がった。声は我ながら普通に聞こえた。「明日、朝からカウンセリングがあるの」

「映奈さん、待って……」幸男も立ち上がった。

「いいから」私は手を振った。「みんなで祝い続けて」

バッグを掴み、皆に別れを告げた。一人一人の顔が少しぼやけて見えたが、それでも私は何事もなかったかのように微笑んで別れの挨拶をした。

ドアのところで、一度だけ振り返った。幸男はまだテーブルのそばに立ち、こちらを見ていた。だが、もう彼の目の表情を読み解こうという気にはなれなかった。

外の夜風は、さらに冷たかった。歩道に立ち、通り過ぎる車を眺めていると、ふと恐ろしい疑問が頭をよぎった。

私は、心理カウンセラーとしての職業倫理に違反したのだろうか?

二年間、私は幸男への関心は専門的なものだと自分に言い聞かせ続けてきた。彼のためにEMDR療法を研究し、真夜中に彼がパニック発作を起こしたときには電話に応じ、セラピーのセッションにシナモンロールを焼いて持っていった――その全てが治療関係を築くためであり、全てが彼の回復のためだった。

しかし今夜、私はあの質問をした。あの境界線を越えてしまった。

携帯を取り出し、タクシーを呼ぶ。車を待っている間、幸男が治療の初期に言った言葉を思い出した。「映奈さんだけが、俺を本当に理解してくれる」

今、私は自分がずっと全てを誤解していたのかもしれないと気づいた。

おそらく彼にとって、最初から最後まで、私はただの主治医でしかなかったのだ。

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