第16話

医者にしては、キャットのお父さんは本当にいい人だった。病院は大嫌いだけれど、彼がそばにいると少しだけ心が安らいだ。彼がくれた小さな白い錠剤を半分飲むと、三十分ほどで足の痛みは鈍い疼きへと変わっていった。

「足の骨が折れているね」キャットのお父さんはそう言い、私の頬にあるあざに目をやって唇を引き結んだ。「ずいぶんと派手に転んだものだ」

「ええ、本当に」私は頷き、声が震えないよう努めて平静を装った。「私、かなりのドジなので。よくあることなんです」

「次は気をつけるんだよ」先生は頷いたものの、納得はしていない様子だった。

「はい」私は呟いた。「実家がリフォーム中で、最近家の中が散らかっている...

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