第168話

カレブとリリーの間にある力関係――まるで炎と氷のような、それでいて同じ源から発しているようなその関係性が、俺にはどうしても理解できなかった。俺は駆け引きなんて大嫌いだ。くだらない真似は反吐が出る。昔からずっと、真っ直ぐな性分なんだ。だがカレブは、彼女を振り向かせるにはこの「押して引いて」が必要だと確信していた。だから俺は舌を噛んで、あいつの茶番に付き合っている。ただ状況をはっきりさせて、人生を前に進めたいだけなのに。彼女がまだ迷っていて、俺たちを――俺たちとの生活を望んでいるのか確信が持てないままじゃ、そんなことできっこない。

バスルームに足を踏み入れた瞬間、情事と緊張の匂いが鼻をついた。背...

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