第252話

リアム視点

玄関のドアがきしむ音がして、彼女の陶酔させるような香りが部屋に漂ってきた瞬間、俺は何かに取り憑かれたかのように立ち上がっていた。エンジェル。俺の天使。彼女が近くにいるとわかっただけで、心臓が早鐘を打つ。アルファ・ブラックウェルが彼女に放った言葉――あの野郎を八つ裂きにしたいという暴力的な衝動はさておき――俺はただ彼女を抱きしめたくてたまらなかった。彼女の居場所はあいつの隣じゃない、俺たちのところなんだと思い知らせるために。

彼女は何でもないふりをしようとした。あの酷い侮辱を受けた後、俺たちの方を向いた彼女の表情は慎重に取り繕われ、感情が読めないようになっていた。だが、俺には見え...

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