第29話

ソフィア

私は書き置きを残し、たくさんあるバスルームの一つで着替えを済ませて仕事に向かった。今日は平日で学校がある日だけれど、上司がどうしてもシフトに入ってほしいと必死だったので、学校のことなんて聞かれもしなかった。

学校にいるキャットに車での迎えはいらないとメールを入れた。つまり、歩いて行かなければならないということだ。でも気にはならなかった。考える時間ができたから。あいにく、今の私には考えるべきことが山ほどあったけれど。

セバスチャンに頼めば送ってくれただろうが、そうしたくなかった。あの巨大な屋敷は息が詰まるし、トレーシー以外は私がそこにいることを望んでいない人たちばかりだ。

店に...

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