第3話
「本当にいいの?」
私はキャットをちらりと見て、恥ずかしさで声を上ずらせながら尋ねた。
キャットは鼻を鳴らし、呆れたように目を回してみせる。
「当たり前でしょ。どうせシフトは同じなんだし。私が三十分早く来ればいいだけの話よ」
彼女はそう言って肩をすくめた。
私が職場まで片道三十分かけて歩くつもりだと知ったとき、キャットは毎日車で送迎すると譲らなかった。人に助けられることに慣れていない私は、彼女の親切心に少し罪悪感を覚えてしまう。
「せめて、毎週ガソリン代を払わせて」
私は着用を義務付けられている窮屈な制服をいじりながら言った。
今日は私の初出勤日だった。日曜日だ。昨日の土曜日は、イーサンとキーランが拒否して私に押し付けてきた課題を片付けるのに費やしたが、今日の店は暇だった。幸い、この町の住人はチップの羽振りがよく、私の失敗といえば、他のお客さんではなく自分自身に何かをこぼしたことくらいだ。制服は店のロゴが入った黒のTシャツに、ぴっちりとした黒のスラックス。おかげで、不器用な私がやらかした粗相もほとんど目立たずに済んだ。
三十分の休憩を終え、私とキャットは店内に戻った。キッチンのドアから様子をうかがうと、客足が増えているのが見えた。時刻は午後五時。あと二時間でシフトが終わる。私はベッドに倒れ込める瞬間まで、分単位で時間を数えていた。
キーランとイーサンが、ジェシーと別の美少女を連れて入ってきた瞬間、私の心臓は凍りついた。彼らが二人の女の子と一緒にいるのを見て、鋭い痛みが胸を走ったが、私はそれを無理やり押し殺した。今は複雑な感情に浸っている場合ではない。
彼らが通されたのは、よりによって私の担当エリアだった。私は思わず呻き声を漏らした。
学校の外で見るキーランとイーサンは、さらに魅力的だった。キーランは肘まで袖をまくり上げた黒のセーターにダークジーンズ、そして黒のブーツを合わせている。イーサンもほぼ同じ格好だが、レザージャケットを羽織っていた。
うっとりと見惚れている自分に気づき、私は慌てて思考を断ち切った。彼らのゲームに乗せられることだけは避けなければならない。
「どうしたの?」
ドアから顔を覗かせたキャットが尋ねた。
「キーランとイーサンよ。最悪」
私はため息をついた。
「何をして彼らに目をつけられたのか知らないけど、同情するわ」
キャットは悲しげに笑い、首を振った。
「何もしてないわよ。一度間違えてぶつかっただけ。それだけで、彼らは私の人生を地獄にするって決めたみたい」
私は顔をしかめた。
「校長に言えばって言いたいところだけど、あの二人は学校中の人間を言いなりにしてるみたいだしね」
キャットは眉をひそめた。
私はため息をつき、これ以上不満を言うのはやめることにした。彼らは私の反応を楽しんでいるのだ。絶対にその手には乗らない。来年の二月に十八歳になって、この町を出ていけるまで持ちこたえればいいだけだ。
「私が接客代わろうか?」とキャットが聞いた。
私は首を横に振った。
「ううん、そんなことしたら一生ネタにされるわ」
私は深呼吸をし、作り笑いを浮かべて彼らのテーブルへと近づいた。視線は女の子たちに向けるように意識する。ジェシーはキーランの隣に座り、イーサンの隣には美しい黒髪の少女が座っていた。
「いらっしゃいませ。本日担当させていただくソフィアです」
私はジェシーの冷笑を無視して言った。「お飲み物はいかがなさいますか?」
「ソフィア? 何その名前」
黒髪の少女が鼻で笑い、それにつられてジェシーも笑い声を上げた。
私は笑顔を崩さずに耐える。
「私は水でいいわ」ジェシーはため息まじりに言った。「でも、あんたのその気味の悪い目を長時間見なきゃいけないなら、もっと強いお酒が必要かもね」
片方が茶色で片方が青という瞳のせいで、自分に似合う色を見つけるのは難しかったが、それがなぜ「気味悪い」と言われるのか、私には理解できなかった。
ちらりとキーランとイーサンを見ると、彼らはニヤニヤしていた。彼らはソーダを、女の子たちは水を注文した。私は逃げるようにテーブルを離れ、飲み物を取りに向かった。
キッチンに戻ると、キャットとタイラーが私を呼び止めた。
「双子はどう?」キャットが眉をひそめて尋ねる。
「いつだって愉快な連中よ」
私は皮肉たっぷりに答えた。
「誰が愉快だって?」
タイラーが私の肩に腕を回してきた。距離感が近すぎて不快になり、私の体は強張った。
キャットが鼻を鳴らす。「どうしてあんたは、その汚い手で誰彼かまわずベタベタ触るわけ?」
タイラーは薄笑いを浮かべ、私に回した腕に力を込めた。「嫉妬は見苦しいぜ、キャット」
「害虫ね」
キャットは首を振りながら吐き捨てた。
ジェシーは明らかに私を目の敵にしていた。私は呼吸を整えようと努めながら、トレイに載せた飲み物を運び、彼らのテーブルへと戻った。何もこぼさずに到着できたときには、心の中で歓声を上げそうになったほどだ。
キーランの前にグラスを置こうとしたその時、彼の手がさっと動き、中身がこぼれた。彼の口元に浮かぶ意地悪な笑みに、血が沸騰しそうになる。
「申し訳ございません。すぐに片付けて、新しいものをお持ちします」
私は丁寧な口調で言い、こぼれたソーダを拭き始めた。
「照れるなよ、スイートハート。汚したのはお前だろ」
キーランが不敵に笑う。
テーブル越しに身を乗り出して汚れを拭き取っていると、心臓が早鐘を打った。キーランのコロンは、土のような野性味の中に微かな甘さが混じり、陶酔を誘う香りだった。
「なんで男物のコロンの匂いがするんだ?」
キーランが問い詰めるような口調で言い、その視線が一瞬イーサンに向けられた。
「関係ないと思います」
私は小声で答え、代わりの飲み物を取りに急いでキッチンへ戻った。
「大丈夫か、ソフィア?」タイラーが声をかけてきた。
「ええ、タイラー。平気よ」
私はふん、と息を吐き、新しいドリンクを掴んだ。
新しいグラスをキーランの前に置き、私は無理やり笑顔を作った。
「ご注文はお決まりですか?」
キーランとイーサンはひどく不機嫌そうで、ダイニングルームの向こうからはジェシーの鼻にかかった笑い声が響いていた。彼らは私に向かって散々侮辱の言葉を浴びせてきたが、私は笑顔ですべて受け流した。
ようやく彼らが席を立ち、私は伝票を掴んで退勤の打刻をするために下がった。
伝票を見た瞬間、私は目を見開いた。
彼らの会計は七十ドル近かったのだが、そこには六十ドルものチップが残されていたのだ。
そして、レシートの下部に書かれたメモを見た瞬間、蝶が舞うようなときめきと吐き気が同時に押し寄せてきた。
『またすぐにな、お人形さん。
E&K』
