第172章

前方の車の流れが再び動き出し、江口美咲はブレーキを離し、視線も前方の道路に戻した。

先ほどの男の表情を思い出し、心の中でさらに皮肉に感じた。「高橋社長は既に藤原さんと婚約しているじゃないですか?なのに今、星ちゃんのことで私に近づいてくるなんて、不適切だと思いませんか?」

しかも、星ちゃんのお母さんが誰なのかもまだ分からないのに。

こう考えると、この男の行動はさらに度を越している。

よくも彼女のことを批判できたものだ。

高橋隆司は彼女が星ちゃんのことを持ち出すとは思わなかった。表情が複雑になり、意味深げに一言返した。「それは違う」

だって、星ちゃんはもともと彼女の子どもなのだから。...

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