第6章

「……ですから、本日、我々が聖桜高等学校を巣立つにあたり、心に留めておきましょう。故郷とは、我々がどこから来たかという場所だけを指すのではありません。我々が未来を築くと決めた場所、それこそが故郷なのです」

蓮の声が、満員の講堂に自信に満ちて、はっきりと響き渡った。十七歳になった彼は背が高く、引き締まった体つきをしていた。物静かな身のこなしは相変わらずだったが、今では何かが違っていた。威厳、とでも言うべきか。自分が何者であるかを知る者だけが纏う、あの種の空気が。

私は涙を拭い、最前列で泣いている恥ずかしい母親にならないよう努めた。

「あんなこと言うなんて、知ってたのか?」悠一が身を寄...

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