第8章

シンプルで品の良いベージュのスーツに身を包み、私は法廷の傍聴席に座っていた。被害者代表として審理に出席するのは、これが初めてだった。

「これより、被告『システム』の次元間人身売買容疑に関する審理を開始する」

荘厳な法廷に、裁判官の声が響き渡る。

被告席には特製の合金ケースが置かれていた。量子物理学研究所の技術者が特殊な装置を起動させると、システムの電子音がコンバーターを通して流れ出す。

「馬鹿げている! この世界の裁判など受け入れられるものか!」

裁判官は表情を変えず、木槌を打ち鳴らした。

「被告、言動には注意するように」

高橋賢治はかつて、この時空の法律では彼を裁け...

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