第52章 鷹司京介は彼女を死なせない

北条千雪は、ほんの一瞬だけ利己的な期待を抱いた。自分が怪我をすれば、両親が見舞いに来てくれるんじゃないか、と。

たとえ叱りに来るだけでもいい。顔を一目見られれば、それで――。

けれど、来なかった。一度も。

看護師が夕食を運び込み、ベッドの背を起こしてくれる。

「北条さん、身体が弱りきってます。ちゃんと食べて、力を戻しましょうね」

北条千雪は、もともと片手しか動かせない。昨日、鷹司京介に乱暴に引っ張られて関節を痛め、いまは箸すら持てなかった。

そこへ菅田美月が駆けつけ、扉のところでその光景を見た瞬間、涙を浮かべて飛び込んでくる。

「千雪、動かないで。私がやるから」

北条千雪は顔...

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