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曲がり角を曲がった瞬間、私は思わず立ち止まった。目の前に「クラーケン」が現れたからだ。

喉の奥で息が詰まる。その巨体は圧倒的で、悪夢のようにうごめく触手が四方八方へと伸びている。

棘のある触手の一本が鎌首をもたげるように下を向き、地面をかすめるほど垂れ下がっている。その表面の質感はあまりに精巧で、まるで生きているかのようだ。大きく開かれた顎にはギザギザの歯が並び、その上にある冷酷で捕食者のような瞳は、私がどこへ動こうとも視線で追ってくるような錯覚を覚えさせる。

この場所の空気は他よりも冷たく、博物館特有のざわめきは不気味なほどの静寂に取って代わられていた。展示物はどれも細心の注意を払って...

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