チャプター 306

翌日、深淵の漆黒を背にするにつれ、私たちを取り巻く海は姿を変えていった。海流に乗って進む中、その変化は最初は微かなものだった。植生や生態系が変わり、水を通して差し込む光の加減が変わり、北へ向かうほどに水圧から解放されていく感覚がある。

魂の奥底にあった、自分でも意識していなかった疼き。それを癒やすような、安らぎと帰属感が満ちてくる。

やがて、その源は疑いようのないものとなる。

エステリスに近づいているのだ。私の故郷の海。

これまであらゆる光景を目にし、死線を潜り抜けてきたというのに、その姿を目にする覚悟はできていなかった。

「東の黄昏」の首都は、まるで正夢のように、あるいは私の幻視か...

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