CH52

ファイルがパチパチと音を立てて起動し、招かれざる客のように部屋中をノイズで埋め尽くした。1883年4月12日付けの歪んだ音声が流れ始め、私とピーターは緊張した面持ちで顔を見合わせる。それは古い報告書で、声はざらつき、遠くから響いてくるようだったが、そこには私の肌を粟立たせるような重みがあった。

『魔の三角地帯にて猛烈な嵐に遭遇』声の主は、言葉少なに事務的な口調で報告する。『巨大波により、準軍事組織のフェリックス・ベッカー将校が乗船していたエニグマの艦船が沈没。ベッカーは氷点下の海で船体の破片にしがみつき、漂流していたところを発見され、唯一の生存者と推定された』

私は椅子の座り心地を確かめる...

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