チャプター 82

「……遠足?」私は尋ね、ヒロが差し出したカードをためらいがちに受け取った。「どこへ?」

「この道を下った先にある町なんか、手始めには悪くない場所だよ」彼は答えた。「ウェイクに辺りを案内してやるいい機会だろ。数日後に東京の雑踏へ飛び込む前に、人間の生活の静かな側面を彼に紹介してやるといい」

ヒロの提案は魅力的だが、私は即座に警戒心を抱いた。公共の場である町中を、人目に晒されながら歩くなんて。いつ突然体に鱗が生え出し、水中で呼吸し始めてしまうかも分からないのだ。想像するだけで恐怖に押しつぶされそうになる。ただでさえ家の中で変身を抑えるのに必死なのに、ましてや公衆の面前など論外だった。

「あり...

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