チャプター 87

正午を過ぎて間もなく、私たちはヒロの家という安全地帯を後にし、最寄りの大都市へと車を走らせた。到着する頃には、あたりはすっかり闇に包まれていた。私は緊張していたが、ヒロが街外れの小さく寂れた地区へと私たちを導く間、努めて冷静さを保とうとした。

昨日歩いた絵画のように美しい海岸線とは大違いだ。通りは狭く、建物はどれも古びて傷んでおり、窓からは洗濯物がぶら下がっている。古いバイクが咳き込むような音を立てて通り過ぎていく。ここは、誰も余計な詮索をしない、そんな場所なのだ。

ヒロが振り返った。張り詰める私の緊張をよそに、彼の口調は軽い。「リラックスしろよ。俺のツテは、お前らがエニグマで見慣れてるよ...

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