第169章

氷上颯は、宴会場の重たい扉の脇に立ち尽くしていた。

壇上の照明が、目を刺す。

五十嵐琉生が相葉栞里の額にそっと口づける。周りは割れんばかりの拍手。

氷上辰也が颯のスーツの裾をきゅっと掴んだ。泣き声を堪えきれない震えた声。

「ママ……ほんとに僕たちのこと、いらないの? 取り返しに行こうよ……」

颯の喉仏が、ごくりと上下した。

ようやく分かったのだ。ある過ちには、やり直しの道など最初から存在しない。――そして自分には、ここに立つ資格すらないのだと。

「……行くぞ」

掠れた声で言い、氷上辰也の手を取る。背を丸めたまま、扉の外の闇へと歩き出した。

婚約披露宴の翌日。五十嵐荘園、書斎...

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