第49章 池の魚に災いが及ぶ

山本一郎の心は加賀霞のお腹の子どものことでいっぱいで、山本桜と駆け引きする余裕などなかった。

「山本桜、さっさと帰りなさい。ここで恥を晒さないで」

この言葉が山本桜の怒りに火をつけた。「不倫する方は恥ずかしくなくて、浮気する方は面目なしじゃなくて、私が恥ずかしいっていうの?八年間連れ添った夫婦なのに、山本一郎、私に対して良心が痛まないの?こんなことして、まだ人間なの?」

正妻と浮気相手が公衆の面前で言い争いを始めると、たちまち多くの野次馬が集まってきた。

人々は加賀霞を指さして噂し、山本桜が強気すぎると非難する声もあった。浮気相手はお腹に子どもを宿しているのだから。

野次馬の中に自...

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