第52章 映画を見るのは責任がある

水原寧々はあまり深く考えなかった。彼女も以前は職場で働いていて、同僚たちが時々取引先との商談の際に、役職が足りないからといって会社の管理職を装うことも見てきた。

そして、ほとんどの取引先は会った瞬間から丁寧に「社長」と呼ぶものだ。一つには謙虚さを示し、もう一つには関係を近づけるためである。

水原寧々は藤原修一とこれだけ長い間生活してきて、彼女の認識では、藤原修一はただの普通のサラリーマンで、家も持っておらず、貯金もたった百万円しかない。

彼女は自分の夫が晨宇グループの社長で、資産が数千億もあるなんて、まったく想像もしていなかった。

「そうなんだ」水原寧々はそれ以上質問せず、言った。「...

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