第107章

涙で顔を濡らす田中ひなの姿を見て、佐々木秋子はハッとしたように時計を見上げた。針はすでに夜の十時を回っている。

佐藤聡の邸宅から帰ってきた娘が、これほどまでに泣き崩れている。それが意味することは一つしかない。

田中ひなは見てしまったのだ。林田知意が、佐藤聡の家にいるところを。

この時間帯に、一つ屋根の下、若い男女が二人きり。そこで何が行われているのかなど、想像に難くない。

佐々木秋子は心底いたたまれない表情を浮かべた。

「ひな、まさかあの二人……ベッドにいるところを鉢合わせしたの?」

その言葉に、田中ひなの嗚咽はさらに激しさを増した。

「お母さん……私、佐藤家の敷居を跨ぐことさ...

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