第16章

投げた言葉を残して、彼は大股で立ち去った。

田中ひなはすぐに緊張して佐藤恵子の手を掴んだ。

「おばさま、どうしましょう?聡が本当に私との婚約を解消するつもりです」

先ほど林田知意に平手打ちされたばかりだが、今の田中ひなが一番心配しているのは佐藤聡との婚約のことだった。

もし両家の婚約が解消されたら、彼女が何年も佐藤聡のそばにいた努力がすべて無駄になってしまう。

佐藤恵子は手を伸ばし、心配そうに彼女の頬に触れた。

「顔は痛くない?安心して、おばさまは聡との婚約を取り消すことはさせないわ。それに林田知意があなたを叩いたこの一発、必ず返してやるから」

その言葉を聞いて、田中ひなは俯い...

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