第195章 まさにこの部屋

その男の名が出た途端、南風順の表情は凍りついた。拳を固く握りしめ、今すぐにでも多根洋という男を握り潰さんばかりの勢いだ。

「あいつは二軒谷さんから散々恩恵を受けてきたし、竜鱗会にも長年身を置いてきた古株です。まさか組織を裏切るのがあいつだったとは、夢にも思いませんでした」

多根洋、か。

その名を聞いて、林田知意は目を細め、記憶の糸を手繰り寄せた。

以前アメリカにいた頃、彼女も頻繁に竜鱗会に出入りしていたため、その男には覚えがある。

確かに、多根洋は二軒谷昇の側近として常に行動を共にしていた。

あれほど目をかけられていた人間が組織を裏切るとは。二軒谷昇からの電話越しに伝わってきたあ...

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