第25章

特に今朝は、自由と向き合う勇気さえなかった。あの可哀想な顔を見たら、きっと心が揺らいでしまうから。

佐藤聡はまったく仕事に集中できず、高橋契が書類を持って入ってくるたびに、彼の暗い表情を見て声をかけることすらできなかった。

いつもなら仕事一筋の佐藤聡が、今日は一日中会社に行かず、書斎に閉じこもったまま。険しい表情で、誰も近づく勇気がなかった。

高橋契は書斎のドアの前に立ち、隙間から中を覗き、深いため息をついた。

田中さんが近づいて小声で尋ねた。「どうですか?高橋特助、坊ちゃんはまだあの状態ですか?」

高橋契はうなずき、二人は書斎から少し離れた場所へ移動した。

「佐藤社長がこの状態...

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