第30章

いま林田知意と北村南が二十億を彼に渡せば、彼はすぐにその通りを彼らに譲るだろう。

服飾ビジネスでその通りを手元に残しておいても、一定のリスクがあるからだ。むしろ転貸して差額を稼いだほうが良い。

しかも、その差額は非常に魅力的で、数年分の利益を一気に稼げるし、自分が苦労する必要もない。

林田知意は穏やかに微笑んで、全く驚いていなかった。この男がとんでもない要求をしてくるのは分かっていたからだ。

「二十億でしたら、今すぐ契約できますか?」

林田知意があっさり承諾したので、二ノ宮社長はやや意外に思い、彼女の即決ぶりに自分が損をしているのではないかと感じ始めた。

「慌てないでください。二...

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