第40章

「ひなはお母さんが直接選んだお嫁さんよ。彼女を好きじゃないのはわかってるけど、男と女の間には時間が必要なの。ひなと婚約さえすれば、時間が経てばいつか好きになるわよ」

婚約の話になると佐藤聡はうんざりしていた。

「もう言ったじゃないか。田中ひなとの婚約は破棄したんだ。冗談でも脅しでもない。これは俺の決断だ。変えるつもりはない」

佐藤聡の表情は断固としていて、拒否の余地はなかった。

佐藤恵子は一瞬呆然とし、信じられない思いだった。

以前、佐藤聡がこのようなことを言った時、佐藤恵子はただの八つ当たりだと思っていた。まさか本気だったとは夢にも思わなかった。

「ふざけないで!田中ひなとの婚...

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