第169章 彼女は秘密を握った

高橋北の言葉など、水無月詩織は一顧だにしなかった。

高橋北は一人、手洗いへと向かっていった。

このレストランに足を運ぶのは、水無月詩織にとって初めてのことだった。

店内はまるで本物の森のようなデザインが施されている。

太い幹を持つ模造樹木、頭上を覆うように重なり合った枝葉。

その葉の隙間から、木漏れ日のような光が点々と降り注いでいる。

それぞれの幹には、アンティークな壁掛けランプが灯されていた。

レストランのレイアウトは、プライバシーを重視した造りになっている。隣り合うテーブル席の間は、緑の蔦と白い紗のカーテンで仕切られていた。

食事をする客たちは、他のテーブルの様子を見るこ...

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