第252章 体で償う

千葉清美が拒絶の言葉を口にする間もなかった。

「一時間以内だ。遅れれば、生き地獄を味わわせてやる」

 福江良平の冷酷な命令が響いた。

 清美は通話を切り、観念して階下へと向かった。思考がまとまらない。自分で運転する気にはなれず、道端でタクシーを拾って病院へ向かった。後部座席に身を沈め、ようやく冷静さを取り戻して状況を分析し始めた。

 水無月詩織が彼女を本家に呼び出したのは、建前上「忘れ物を取りに来い」という理由だった。

 しかし、その忘れ物とやらは? 影も形もなかった。

 明らかな口実だ。

 詩織に何か言いたいことがあったのか? それなら電話やメールで済むはずだ。わざわざ顔を合...

ログインして続きを読む