第282章 私を食べて

洗面台の前に立ち、千葉清美は激しくえずいた。

今日は何も口にしていないため、吐き出されたのは少量の胃液だけだった。それでも胃の中を空にすると、少しだけ気分が楽になる。鏡越しに自分の青白い顔を見つめ、冷たい水で顔を洗い、口をゆすいでからゆっくりと外へ歩み出た。

うつむき加減で廊下を歩いていると、不意に誰かの胸元にぶつかってしまった。

「すみません」

慌てて頭を下げ、壁沿いに避けて先へ進もうとする。

しかし、黒い革靴が彼女の足取りを追うように動いた。

胸騒ぎを覚えて振り返ると、そこには両手をポケットに突っ込み、冷ややかな目で見下ろしてくる福江良平の姿があった。

彼が一歩距離を詰める...

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