第10章 彼は村山愛未を選んだ

(牧野結菜の視点)

先輩は私を一度見て、それから福山真司の――正気を失ったみたいな顔を見て、何も言わなかった。

ただ、小さくうなずく。

去り際にもう一度、深く私を見つめた――心配と、どうしようもなさが滲む目で。

そして、病室のドアをそっと閉めた。

病室に残ったのは、私と福山真司だけ。

福山真司は私を食い入るように睨み、胸を大きく上下させている。

「警備員を呼ぶ」という一言が、あの妙に高い自尊心へ刺さったのだろう。抑え込もうとしているのが伝わってくる。

でも、もうどうでもよかった。

「牧野結菜……お前、芝居はもう十分だろう」

歯の隙間から絞り出すような声。

芝居?

三年...

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