第15章 片手

(牧野結菜の視点)

チャイムが鳴ったとき、私は荷造りの真っ最中だった。

村山愛未は招きもしないのに勝手に押し入ってきて、リビングに積まれた梱包済みの段ボール箱をひと目で見渡す。口元が、わずかに歪んだ。

「結菜さん、荷物まとめて……出ていくつもり? まあ、真司兄が知ったらきっと傷つくよ」

見返す気にもならない。私は背を向け、黙って手を動かし続けた。

「出ていって」

「姉ちゃん、そんなに怒らなくてもさ。真司兄は、ただ昔の情に縛られてるだけ。夫婦だったんだし。時間が経てば、姉ちゃんがいない暮らしにも慣れるよ」

そう言いながら、彼女はわざとらしく自分の下腹をそっと撫でた。

「それに…...

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