第176章 額を地につけて三回おじぎをする

(福山真司の視点)

岩瀬から聞いた。祖父が福山圭を食事に呼んだ、と。

あの日の夕方、実家のリビングで祖父は一時間以上も座っていた。茶は三度替えたのに、一口も口をつけない。山川さんは五時から六時過ぎまで立ったままで、脚が固まってしまったらしい。

祖父が「今、何時だ」と訊く。山川さんが「六時十五分です」と答えた途端、祖父の指が杖を叩き始めた。トン、トン……それからもう二つ。

山川さんは祖父に四十年仕えている。あれは祖父が緊張しているときの癖だと言った。いや、緊張じゃない。後悔だ。

昨夜、怒鳴り散らしたあと、祖父は父に「圭を連れて来い。飯を食わせる」と言い切った。あれほど断言しておいて、...

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