第177章 それぞれが別のことを考えている

(福山真司の視点)

岩瀬があとから教えてくれた。福山圭はマーケティング部に配属された初日、やけに大人しかったらしい。誰にも自分から話しかけず、会社のことを探る素振りも見せない。ただ黙ってデスクに座り、資料をめくっていた。

古株たちは陰で少しだけ口にしたそうだ。

「おとなしく見えるけど、本当におとなしいのかね」

だが、その日の午後。圭は最上階へ向かった。

岩瀬が止めた。「福山社長はご不在です」

圭は薄く笑って言った。

「知ってる。兄貴がいないのは。書類を取りに来ただけ」

「書類は正規の手順で。報告はメールでお願いします」

「わかった」

圭は素直に頷き、踵を返した。

数歩進...

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