第188章 留置場へ戻る

(福山真司の視点)

田端教授を見つめ、口の端だけをわずかに引き上げた。

「……彼女を、諦められないんです。こんなふうに誰かを愛したことは、今まで一度もない。痛くて……死にそうだ」

言葉にした瞬間、声が震えた。演技じゃない。本当に痛い。ひとつ音を落とすたび、胸の奥を刃物で抉られるみたいだった。

それでも同時に、頭は高速で回っている——この言い方なら、彼はどう受け取る? 祖父に伝えるか? 祖父を説得する材料になるか?

必要なのは、田端教授をこちら側に引き込むことだ。だから弱さを見せる。癒やせる患者だと思わせる。

田端教授の声は穏やかで、芯があった。ざわつく神経を、そっと手のひらで押さ...

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