第194章 彼は承諾した

(牧野結菜の視点)

岩本源との通話を切って、階段室からデスクへ戻った。パソコンの画面を見つめたまま、しばらく指一本動かせない。

「平山徹也に話してみる。返事を待て」

そう言われた。けれど、待つだけなんて無理だった。スマホの画面を何度も点けては消す。通知は来ない。何も、来ない。

定時を過ぎてから、私は岩本源の法律事務所の前にあるカフェへ行った。私が来るような場所じゃない。それでも、マンションに一人で戻りたくなかった。あそこは静かすぎる。静かすぎて、秒針の一つ一つが「何を待ってるの」と突きつけてくる。

目の前のコーヒーはとっくに冷めて、氷は溶けて水になり、黒色の液体を薄めていた。薄まっ...

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