第195章 彼は負けられない

(福山真司の視点)

留置場。独房。

廊下を行き交う足音が、遠ざかっては近づき、近づいてはまた遠ざかる。けれど、扉が開く気配はない。

俺は硬いベッドに背を預け、膝を立てたままタブレットを腿に乗せていた。画面だけが白々と光っている。

LIMEのトーク画面。いちばん上に残っているのは、平山徹也からの最新メッセージだ。言葉はない。送られてきたのは写真だけ――三品。海老の炒め物、サラダ、それから味噌汁。

花柄の鍋。

あれは、結菜が家から持ってきた、たった一つの調理道具だった。あの鍋で何度も何度もスープを煮て、そのたびに俺の前へ運んできた。

そして俺は、その一杯を一度だってまともに味わった...

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