第20章 破片

(牧野結菜の視点)

ドアを叩きつける音が遠のいたあと、書斎に残ったのは私ひとりだった。

腰を折り、彼にくしゃくしゃにされた賃貸契約書を拾い上げる。丁寧に伸ばし、何事もなかったように机の上へ戻した。

そしてまたパソコンの前に座る。画面には、たった今送ったメールが送信済みフォルダに静かに沈んでいた。宛先は杉浦晴陽。本文は一行だけ。

【部屋、気に入りました。署名しました。ありがとうございます】

その一行を数秒見つめ、私はページを閉じた。思い返すようなことじゃない。ただの住所だ。ここから十分に遠い、逃げ道の名前。

それから数日、彼はまた、会食やパーティーに明け暮れた。隣にいるのはいつも村...

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