第204章 彼女は名前を聞いた

(福山真司の視点)

岩瀬がまた来た。今日はいつもより遅い。手にしたファイルを、指が白くなるほど握りしめている。

「福山社長、幸村千弘の件で大きな動きがありました」

俺は背筋を伸ばした。

「秘書が児童養護施設まで当たったんですが、村山愛未のファイルが見つからなかったそうです」岩瀬は早口で続ける。「院長いわく、数年前に施設が移転して、古い紙のファイルがかなり紛失した、と。……ちょうど村山愛未の分だけが」

紛失?

そんな都合のいい偶然があるはずがない。早くも遅くもなく、幸村千弘が調べに行ったそのタイミングで消える。誰かが裏で手を回し、村山愛未の過去をきれいさっぱり消したんだ。

「幸村...

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