第220章 赤の他人

(福山真司の視点)

幸村の母さんの手が、宙で止まった。――あの平手は、もう落ちない。そう確信した。

「おじいちゃん」が杖を床に、どん、と突いた。音は大きくない。なのに休憩室の空気が、一瞬で凍りつく。

「奥様。その一発は、叩いて然るべきです。……ですが叩いたら、いくつかのことも、はっきりさせていただきたい」

幸村の母さんの手が、ゆっくり下りる。胸が激しく上下している。ちらりと見上げると、瞳は涙でいっぱいだった。落ちそうで、落ちない。

おじいちゃんは杖に体重を預けて立ち上がり、俺のところまで歩いてきた。遅い足取り。まるで一歩ごとに、何かを測っているみたいに。俺の前で止まる。

「立て」...

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