第221章 彼女には時間が必要だ

(福山真司の視点)

岩瀬がドアを押して入ってきたとき、俺は天井を見ていた。天井灯の明かりが、むらなくそこに広がっている。ひびひとつない。影ひとつない。まるで誰にも触れられたことがないみたいに、やけに清潔だった。

「福山社長」

声をぐっと落として、誰かに聞かれるのを怖がるみたいに言う。

「集中治療室のほうで、新しい動きがありました」

布団の下から手を出し、ベッドの縁にだらりと置く。急かす気にもならない。

「牧野さんが目を覚ましました」

指先が、ぴくりと動いた。拳を握るでもなく、ただ指が掌へ少しだけ丸まる。

「いつだ」

「だいたい一時間前です。ナースが出てきて言いました。意識は...

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