第227章 その価値はない

【牧野結菜の視点】

あの言葉を口にしてから、病室はしばらく静かになった。気まずさのせいじゃない。言うべきことを言い終えて、ようやく「いい顔」をしなくてよくなった、そのあとの静けさだ。

平山里穂子は返事をしなかった。たぶん、私がここまで直球で言うとは思っていなかったんだろう。昔の私なら、こんなことは言えなかった。耐えて、飲み込んで、全部胸の奥に押し込めて、それでも笑って「大丈夫」と言っていた。

大丈夫なわけがない。

深夜、待っても帰ってこない人。冷めたまま捨てられる夕飯。

「大げさにするな」――その一言。

ひとつひとつが針みたいに刺さって、刺さった瞬間は痛くないのに、抜こうとしたと...

ログインして続きを読む