第27章 施錠返し

(牧野結菜の視点)

今日も――彼は、彼女を連れて帰ってきた。

ドアが開く前から、村山愛未の声が聞こえる。甘ったるくて、やわらかくて、砂糖水みたいにまとわりつく声。三年、ずっと聞かされてきた。あの声が家の中に入ってくるたび、私の生活はまた、押しのけられる。

キッチンではスペアリブの煮詰めがちょうどいい具合に照り、火を止めた。皿を取ろうと身を返した、その瞬間だ。

背後から伸びてきた手が、出来立てのスペアリブをつまみ上げ、勝手に口へ運ぶ。

「熱いよ」

振り向かずに言った。言っても無駄だとわかっている。福山真司は、いつだって私の言葉を聞かない。

案の定、止まらない。次の瞬間、熱さに「っ...

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