第28章 離婚協議書

(牧野結菜の視点)

『真司兄、結菜さんと喧嘩しないで……部屋に戻ろ?』

村山愛未が福山真司の腕を引いて去っていく。足音が遠ざかり、寝室のドアが閉まった。鈍い音がして、廊下はしんと静まり返った。

私はイヤホンを外し、張ったこめかみを指で揉む。ノートパソコンの画面はまだ明るいまま。設計図の線はびっしりと絡み合い、数秒見つめても、文字ひとつ頭に入ってこなかった。

喉が渇いた。水を飲みにキッチンへ――そう思って立ち上がる。

物置のドアは軽い。押しても、ほとんど音がしない。廊下の照明は落ちたままで、階段口の壁灯だけがぼんやり黄いろく灯っている。裸足で床を踏むと、冷たさが足裏からじわりと這い上...

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