第40章 鏡の中の女

(牧野結菜の視点)

平山里穂子はくるりと背を向け、手の甲で目元をひと拭いした。もう一度こちらを向いたときには、いつもの元気な顔に戻っている。さっきの胸の痛みなんて、私の見間違いだったみたいに。

「骨にヒビが入ったくらいで何よ。ヒビ入ったら女王やめなきゃいけないの?」

彼女は私の手から赤いワンピースをひったくるように取り、店員へ突き出した。

「これ。あとさっきのも全部。いちばん小さいサイズで、まとめてお願い」

それから私の手首を掴み、ショッピングモールを引きずるように出ると、彼女がいつも通う美容室へ真っすぐ向かった。

「切ってください」

鏡の前に座り、三年間伸ばしてきた髪を見つめ...

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