第41章 逃走

(牧野結菜の視点)

レストランのスタッフに先導され、二人は私たちのすぐ隣――空いた席へ向かってきた。

靴音が、だんだん近づく。視線がこのあたりをなぞった気配がして、背中を火で炙られたみたいにぞくりとした。身体が硬直する。けれど、私は振り返らない。

――気づくはずがない。

福山真司の中で、牧野結菜はずっと「地味な色の服を着て、長い髪を垂らした女」のままだ。赤いワンピースに短い髪の、今の私なんて“別人”。そもそも、彼は一度だって私をちゃんと見てこなかった。そんな人が、変わった私を見分けられるわけがない。

案の定、足音は止まらない。彼は隣のテーブルに腰を下ろした。

心臓が早鐘みたいに跳...

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