第42章 ブロック

(牧野結菜の視点)

マンションに戻ったころには、もう日付が変わる寸前だった。

平山里穂子はスーツケースを引きずりながら、この1LDKをぐるりと見回す。何を思っているか、手に取るようにわかった。狭い、古い、下手をすれば自宅の使用人部屋のほうが広い――そういう類のやつ。

眉間にしわを寄せた顔が、逆にちょっと可笑しくて、私は息を落とした。

「うそでしょ、結菜。ここに住んでんの? 狭すぎ! クローゼットもないじゃん! あのクソ野郎、こんな扱いしてんの?」

「私が借りたの」

靴箱から新品のスリッパを出して差し出す。自分でも驚くくらい、声は落ち着いていた。

「……彼とは関係ない」

口にし...

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