第74章 狂ったのか!

(牧野結菜の視点)

「……結菜……」

紙やすりで喉を削ったみたいにしゃがれた声。濃い煙草と酒の匂い、徹夜明けの湿った疲労がまとわりつく。

福山真司だ。

心臓が跳ね上がった。喉から飛び出しそうなくらいに。反射的に身をよじるが、手首を掴む指がさらに食い込む。骨ごと潰されるんじゃないかと思うほどの力。

「放して!」

声を落として怒鳴る。

「放さない!」

真司は執拗に私を押さえつけ、もう片方の手まで伸ばして肩を掴んだ。逃げ道を塞ぐみたいに、私の身体を柱と自分の胸の間へ押し込める。

私は足を振り上げ、全力で彼の脛を蹴りつけた。

「……っ!」

痛みに詰まった呻きが漏れる。けれど腕の...

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