第267章

「お前が水原拓真という男を、どれだけ重要視しているかは分かっている」

「だが奴もただの人間ではない。でなければ、長年お前の敵として張り合うことなどできまい」

吉野文詠の弁解を聞き、電話の向こうの相手の顔色は幾分和らいだようだ。口調も、先ほどまでの張り詰めた厳しさは鳴りを潜めている。

「いいだろう。あと一ヶ月だけ猶予をやる」

「一ヶ月後、納得のいく結果を出せ。それができなければ他の者を送る。その時、この組織にお前の席はないと思え」

相手が一方的に電話を切る音が響き、吉野文詠の心は鉛のように沈んだ。

この組織は階級が絶対だ。誰もが明確な役割と任務を負い、組織に認められるには与えられた...

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