第289章

「でも安心してください。私が戻った暁には、必ず十分なお礼をさせていただきますから」

「それにしても、ここは一体どこなんですか? 街へ戻る方法はありますか?」

黒川綾の問いかけに、その中年女性は困ったような、どこか諦めたような眼差しを向けた。

「ここは潮水村だよ。見ての通り山奥でね、周りは切り立った崖ばかりさ。街へ出たいなら、目の前のあの山を越えなきゃならないんだ」

「あの山道は険しいよ。今のあんたの様子じゃとても無理だ。まずはしっかり養生して、体を治してからにしな」

その言葉を聞いて、黒川綾の顔に不安の色が濃くなる。目の前の女性が親切心から言っているのは分かっていた。道中の危険を案...

ログインして続きを読む